とにかくキンは働き者でした。幸い当時16歳の牧田貞次郎がいたので、キンと二人して平太郎亡き後の暖簾を守り抜きました。定次郎は早朝から原料を求め自転車で茅ヶ崎、鎌倉まで出向き、戻ってからキンと二人でかまぼこを作りました。
長い擂粉木棒で二人して四斗樽に氷を細かく砕いて冷蔵庫代わりにしました。キンと貞次郎は懸命になって井上蒲鉾店を盛り上げました。
牧田貞次郎は後に彦太郎の姉イチと結婚し鎌倉に店を開きました。これが
鎌倉 井上蒲鉾店の始まりです。
その後、三代目井上彦太郎、四代目井上浩吉は生産ラインの一部を機械化したものの、先代からの技法や味を守り、頑なまでに手作りにこだわってきました。